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猫屋

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 MUKU-DATA   木材倉庫まで徒歩で (2019 12/29 秋葉区)


お正月に調べものをしていたら気になる記事に目が留まった。

大正末期から昭和初期になると銘木店を名乗るようになり、
それ以前は
・丸太類を扱う丸太屋
・床柱や床の間廻りを主とする唐木屋
・板類を扱う猫屋
に分かれそれぞれが得意とする分野を製造販売していたが、
各専門店が材を融通し合うようになり総合的に取り扱う銘木店が増えていった。
とある。。。

丸太屋、唐木屋は頷けるが、板類は何故に「猫屋」?と気になって調べるも
インターネット上では検索してもその真意は出てこない。。


猫屋・・・


屋号か何かで、猫屋ってところが、板類を多くやっていてその流れなのかなぁ・・
板類と猫って何か関係あるんだろうか・・と。。



こりゃ気になって頭から離れないので、
新木場で頼りにしている銘木匠M氏に聞いてみることにして電話した。



あぁそれ、オレも昔に気になって先輩に聞いた事があるんだけど・・
なんだっけなぁ・・と

ねこ屋っていう屋号だっけなぁ・・確かに「ねこ屋系」の出の人たちがいるんだよなぁ・・

猫も避けて通るようなゲテモノ屋だったっけなぁ・・(それ、おもろいですね)
まぁ、先輩に聞いておくわぁ

って一旦電話を終え、その後「東京の銘木業」と書かれた
何かの本をコピーしたFAXが10枚ほど送られてきた。


この資料が面白く
以下部分抜粋

室町時代、太田道灌はすでに江戸氏の築いた江戸城を修築したが、
当時城下町であった八代洲海岸(現:日比谷付近)に「板屋」と呼ばれる
竹木薪炭商がこのころ発生したと記録が残されている。
徳川家康が江戸を居城としてから、江戸城の本格的な増築をはじめ、
町屋の拡張、諸国大名の江戸屋敷建設、神社仏閣などの建立で
木材需要も江戸の繁栄と共に大きく伸びていった。
徳川末期になると、竹、小丸太をはじめ
船材として、欅、杉、あるいは桶用のさわら材を農家の副業として取り扱う者が発生し始めた。
その発生過程は江戸初期の土着の竹木薪炭商の生い立ち類似しているようだ。
当時の地場材の取り扱いから四谷丸太などが生産販売され、
このころ「板屋」と合わせて「丸太屋」が起こり、
この地丸太を取り扱う業者を銘木業の前身とみてよいだろう。
 
中略

幕末から明治時代にはこのように地山の四谷丸太を扱う丸太屋がかなりいたようである。

一方鎌倉河岸一帯(現:日比谷通り神田橋たもと付近)に定着した板屋は、
欅、松、栃、椹などの盤木、板物を扱う業者であって別名「猫屋」と呼ばれていた。
明治45年刊行の「木材ノ工芸的利用」にも
「けやきノ産出ハ東北ガ最モ多ク船艦材、鉄道車輛、電柱、枕木ナドニ仕向ケラレルモノ多シ、
指物材、建築装飾用材、スナハチ床材、床柱ノ類ハ所謂『猫屋』(鎌倉河岸ノ木材商ヲイフ」

中略

以上のように東京では、丸太屋、猫屋、唐木屋の3業種が明治の末までそれぞれ繁栄し、
一般に銘木店と称されるようになったのは大正末から昭和にかけてである。



とまぁ、送られてきたFAXは他にも興味深い内容のものが多く書かれているのですが、
所々で「猫屋」が出てくるも、
何故に「猫屋」と言われるようになったのか、その云われが書かれていない。。

因みにこの資料によると、
銘木の看板を一番先に掲げたお店は
明治末には
内外銘木陳列所の看板を掲げた蔵前の武蔵屋瀬山唐木店
内外銘木取り扱いの看板を掲げた京橋の篠田政之助商店
だとされているらしい。




猫屋・・・ 



銘木匠M氏から時間をおいて再び電話がくる。
師は現在60代半ばだが、昔聞いた事がある記憶をたどり
先輩(80代)にネコヤの事を聞いてくれたらしい。

わかったぞ と。

それは、根っこからきているらしいと。。

木の根っこ、良材を扱う銘木屋に対して、余った根っこや銘木屋がやらないような部材を扱っていたらしい。
木の根っこなど確かに昔から磨いて置物だとか、あったのかと思う。
根っこ屋さんを
もしかして一流の銘木を扱う業者が揶揄して根っ子屋、猫屋と訛らせ言われるようになったのも
あってもおかしくない話だと思った。

FAXを貰った資料から以上のことをまとめ推測すると

丸太屋や唐木屋など良材を扱う銘木屋の前身となる業種があった頃、
ジャンル分けできない木の根や変木類、材になる前の盤木、装飾材など扱う業者が
鎌倉河岸一帯に多く定着し、お店の前では根っ子や変木など見たこともないような
変な木が多く並べられていた。
王道である丸太屋、唐木屋からすれば、
あそこら辺は猫も跨がないほどのゲテモノ揃い、猫屋だ! みたいな感じ?
だったのではなかろうかと妄想してしまう。
木の使い道は多岐に渡るし部材ごとの完全な仕分けは無理なくらいに多い。
もしかして丸太屋、唐木屋も、ちょっと自分もあの材扱ってみたいなぁ・・と
羨望の気持ちもあったのかもしれないなぁ・・

これはあくまでも推測だし、根っこ屋からの猫屋も業界の長老の話ではあるが、
何だかきっとこの線が濃厚かと思っている。

どなたか、真の意味での「猫屋」の云われを知っている方がいらっしゃれば
是非ご連絡をいただきたく思います。



ところで昨今、求められることが少なくなった銘木類、丸太類、唐木類
昭和の時代に誰も彼もが憧れてせめて一本はと立てた床柱とそれに付随する床の間廻り
明治時代から100年以上が過ぎ、
今、まさに材木屋にも求められている材っていうのは
現代版「猫屋」的な材
いろんな用途に向けられる材なのではなかろうか?と思ったりしてしまう。

弊社木材倉庫の前に置いてある大きな裂けた木の看板にはまだ社名や文字は入れていないのですが、

「猫屋 新発田屋」

と揮毫してもらおうか?など
更に妄想が膨らんでくる。

(何屋かよけいわかんなくなるか・・)










猫屋新発田屋木材倉庫
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by solid6q | 2020-01-10 20:21 | 新発田屋的(製材所ならでは的)商品